ここ1週間ほど家の近所というか100メートル範囲内にヒグマが出まして、緊張感を持って生活していたんですがこの度ヒグマが駆除されまして、出没圏内に住んでいた自分としては突発的致死インシデントが解消されたので大変ほっとしているんですがヒグマの脅威を肌で感じていない人達が「殺す事はないだろう」「麻酔銃で眠らせて山の奥に帰しては」「動物園に入れればいいと思います」というお話をしているのを見て、ちょっと思った事を。
基本的に北海道におけるヒグマって天災の類なんですよ。出会い頭にぶつかって相手の機嫌が悪ければ無残な死に方をする、という荒御魂そのものなんですよね。ヒグマって。
のんきな人が思うクマさんってツキノワグマが殺傷力を控えてサイズだけ大きくなったイメージだと思うんですが、人の頭を引きちぎる凶暴な動物がウサイン・ボルト以上の速度で走ってくる訳ですよ。基本的に近距離で出会ったら後は生きるか死ぬかは運任せ、という存在なんですよね、ヒグマって。
説明が難しかったら、「ヒグマは日本で出会える最強の狂戦士だ」と思ってね。
で、天災の類に対して人間が出来るのは備えだけなんですよ。なるべく出会わないようにして、出会わないようにして、出会わないようにするしかないんです。出会ってしまったら手遅れの類なので、とにかく「出会う可能性を低くする」しかないんです。
しかし、「天災を避ける事ができるボタン」があったらどうします?押しますよね。誰だってそうする、俺だってそうするのです。それが「駆除」です。
大雑把に説明すると、人里付近に来たヒグマを銃で撃って殺します。
なぜ殺すかと言うと、人里に降りてくるヒグマは人間を恐れていないのでいつか事故が起こる事と、眠らせて山に帰した所でヒグマにだって脳みそがあるんで戻ってくるんですよ、餌を求めて。そもそもヒグマが人里に降りてくるのは山との境界線にある人の作った畑の作物を狙っての事なので、楽に美味しい作物を食べられると知ったヒグマはもう山には帰れないのです。山に帰しても必ず人里に戻ってきて、そして人を恐れないので逃げず、いつかは事故になるのです。
山と畑の間に無機物な街が挟まれば、人間を恐れている内に畑にはたどり着かず山に帰っていくヒグマがいるかも知れません。その可能性は否定しないんですが、畑は必ず山と街の境界線にあり、畑に来るという事は街に出るという事とイコールなんです。そして街に出るという事は人に慣れるという事で、人と出会っても逃げなくなり、そして不幸な事故に繋がるのです。
これはもう避けられないんですよね、山にヒグマが住み人が里に住むのであれば、山と里との境界線が必要で、どこまでが人間の縄張りでどこからがヒグマの縄張りかは明確にして、人もヒグマも侵さないようにする必要があるんです。
そして、里という縄張りを作った以上そこはヒグマには譲れず、里に入ってきたヒグマは縄張りから排除するしかありません。しかし、眠らせて逃がすのでは駄目です。必ず戻ってくるので。ヒグマには人間の縄張りが見えないので、人間が引いた縄張りを人間が執行しヒグマを断ずるしか棲み分けはできないんです。
じゃあ捕まえて動物園に送れば、という意見もあるかも知れませんが、里に出てくるヒグマ全部を捕まえて動物園に送るのは無理です。北海道にはヒグマが多すぎるんです。
そして、「麻酔銃で眠らせる」のには猟銃免許を持っていて獣医師資格を持っているレア人材でないとできない事なので、ヒグマの数とバランスしないんです。猟銃資格を持つ獣医師とヒグマではヒグマが多すぎる。というか現実的ではないですよね、出てくるヒグマにジャストで猟銃免許持ち獣医師が出会える可能性なんて何%だと思います?出会うまでに何人死ぬと思ってるんですか。
そもそもこれは野生の獣と人間の縄張りの問題であって、縄張りを犯したら殺すしかないんですよ。野犬だって凶暴だったら殺さざるを得ない。ヒグマだったら凶暴じゃなくても事故る可能性を考えたら殺すしかないんですよ。
多分これはリアルにヒグマに出会って死ぬかも、という実感のない人にはわからない事だと思うんですよね。本州の人にとってヒグマに殺されるというのは隕石にあたって死ぬくらいの感覚だと思うんです。
しかし北海道は違う。歩いて10分の山に鹿もヒグマもいるんです。鹿に出会う気楽さでヒグマに出会う。そして1%の確率で襲われたら助からない。
北海道でのヒグマの恐怖は交通事故に近いものがあると思うんですよね。
交通事故を防げるなら防ぐでしょう?
なら、ヒグマは駆除せざるを得ないんですよ。
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如月翔也
ガジェットとAppleとTRPGが大好きな中年男です。文章をとにかく書くのが好きなので毎日のように色々なブログで文章を打ちまくっています。もし何か心に引っかかるものがあれば私のTwitterをフォローして頂けると更新情報が流れます。